Lohmann International Associates

ローマンインターナショナルアソシエイツ

176-0021東京都練馬区貫井

カナダの年金アクチュアリー、USエンロールドアクチュアリー、社会保障制度による各・墲フ給付コンサルタント。

Tokyo, JAPAN

Leslie John Lohmann, FSA, FCIA, FNZSA
Canadian Pension Actuaries, United States Enrolled Actuaries and Employee Benefit Consultants Serving the International Community
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Last Updated February 27, 2006 (note that references are updated independently.)

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The Missing Asset - 欠落した資産[RM1] [1]

Text Box: 訳者からのコメント
米国・カナダ・ニュージーランド各国のアクチュアリー会正会員で、当会Kenkyu-Kaiinのレスリー・ローマン氏が本年7月のSOAセミナーで配布した論文に加筆・修整したものを翻訳し、紹介する。この論文は、主として米国の退職給付制度の問題点を、日本との比較を交えて指摘したものである。筆者からみた日本の記述には日本人として若干の違和感を感じる部分もあるが、日本の年金アクチュアリーにとって新しい視点を提供する有益な論文と考えた。一読いただけると幸いである。

 

 

職業パイロットがいる。彼女の義務は、彼女を雇用する事業主の顧客が乗る飛行機を飛ばすことである。彼女は、給与と福利厚生により処遇されている。通常の雇用契約における取引の流れは、まず彼女が飛行機を飛ばし、次に給与が支払われる。彼女が仕事を実行してから給与を払われるまでの間、彼女は事業主にとって無担保の債権者である。幸いにして、従業員の給与は、事業主の破産状態において優先権を持つ。彼女の給与は、次の支払小切手を担保に短期の借り入れができる程度には、支払われる高い可能性を持っている。

たまたま彼女が、事業主によって払い戻されるべき費用を負担したとする。費用負担から払い戻されるまでの期間は、給与と同様に、彼女は事業主にとって無担保の債権者である。しかし給与とは異なり、払い戻されるべき費用は、事業主の破産において特別な優先権は持たない。事業主が払い戻さないままに破産したとすると、他の無担保の債権者と一緒に回収する権利を持つだけである。

パイロットとして、彼女には多額の最終平均給与比例の給付建て退職給付制度がある。彼女の給与は高く、勤続年数も長い。数学的には、彼女には、パイロット以外の従業員より早い引退年齢において、彼女を雇用する事業主の従業員にとして最高額となる給付に対する権利がある。

しかしながら会社の給付には、どんなものであっても彼女がその給付を獲得したと感じる労働を提供した時から、実際に給付が支給される時までの期間に、特別な問題があることを彼女は理解していない。彼女は、単に期待しているだけなのである。給与や払い戻されていない費用とは異なり、事業主には、彼女の労働期間中に、彼女の給付に対するいかなる法的義務も発生していない。受託者や関連した信託との関係では何らかの法的権利を持つかもしれないが、いったん事業主が破産すれば、彼女は事業主に対してなんら権利を持たない。事業主の義務は、受託者や関連する信託に対するものであり、その関係は契約もしくは法により統制されている。

Text Box: 要         約
制度提供事業主対従業員および社会(例:PBGC)、経営者対格付機関、投資家対取引先等の利益の対立によって作られた緊迫状態は、私的退職給付制度が持つ約束機能の拡張を要請することなしに、解決されることはない。アクチュアリーは、一般大衆が、将来の約束の現在価値と、その価値が約束の財源に依存していかに変動するか、ということを理解する手助けをしなければならない。アクチュアリーは、リスクを負う者がリスクを負うことに対する報酬を得るべきであるという原則と、年金基金が持つ投資の本質について、より率直であるべきである。
本稿は、積立という行為が債務を管理することの当然の帰結であることを主張する。
本稿は、1)資本が不充分な法人は保険や年金のビジネスに関わるべきではないこと、2)すべての投資は将来の利益の予測値を基礎とした約束手形であること、3)唯一の最も重要な約束手形が、すべての北米の私的退職給付制度から欠落していること、4)退職給付制度の保障が、給与や福利厚生に関する労使交渉の権利を制限すべきではないこと、を論ずる。これらの議論から派生することも議論される。
 


退職給付制度に関しては、事業主は常に許容される最低額しか拠出してこなかった。このことは、最近の市場の「調整」より前に事業主がコントリビューションホリディを行使していたとき、彼女の既発生給付さえも完全には積み立てられていなかったことを意味する。社会的に保証されるのは、より遅い引退年齢に支給開始となる、既発生給付の約30%であり、これは、彼女が期待していた全勤務期間、最終給与の給付のほんの一部に過ぎない。

最近、彼女を雇用する事業主は破産保護を求める手続きを開始した。

 

 

Eugene Wedoff判事は、争点とはなっているが、この裁定はいかなる法やユナイテッド航空の団体協定に違反するものではない、と言った。彼は、ユナイテッド航空のような会社の従業員は、なんの措置もなく会社が破綻すれば、より少ない給付か、給付なしで終わることもありうることを指摘した。

「可能な選択肢の中で最も悪い程度が最も少ないのは、航空会社の機能を保ち、従業員に給与を支払い続けるものである。」とWedoffは言った[2]

ユナイテッド航空の客室乗務員のコメントは、次のように報じられている。

「裏切られた感じです。」と彼女は動作を交えて言った。Tamuk (49)は、Wedoffの裁定により年金が月額1,700ドルから、月額800ドルに減らされる、と言った[3]

 

 

1. なぜ積立基準が必要か?

2. なぜ事業主は、退職給付制度を積立不足にするのか?

3. なぜ社会は、退職給付制度の加入者を保護する義務を受け入れるのか?

4. なぜ制度提供事業主は、会計基準をそれほどまでに毛嫌いするのか?

5. 金融経済学のどこが悪いのか?

本稿では、欠落した資産がこれらのすべての質問において役割を果たすことを示す。

 

投資資産/将来の経済活動の価値の貯蔵庫

引退における将来の経済的な安心感は何に依存するのだろうか?ブッシュ大統領は、政府の債務はそれほどの安全性がないことを示唆した[4]。彼は、社会保障信託基金を支える特別債に言及して、「信託「基金」はない。私が直接見たのは、単なる借用書(IOU)だ。」と言った。他の専門家は、引退給付を支える投資資産は、経済変動に関わら引退時に何らかのかたちで食料(食料を用意するために必要な燃料を含む)、住居(衣料品を含む)、安全(医療を含む)を提供する、とするできると言う。特に、投資資産は、就労していない扶養家族を支える労働者が少なすぎる場合にも、完全な、就労しない老後を支えることができる、と彼等は強調する。

住宅を、前もって支払いが完了している場合に、経済情勢がどうなろうとも、極めて少額の費用で住居を提供する投資、と規定してみよう。「住宅を購入する最大の理由は、そうすることによって実質的に自分自身に賃貸することができることである」[5]。費用といえば、メンテナンス等の維持費と固定資産税のみである。固定資産税は高齢者には低額となる可能性があることに加えて、メンテナンスと税は周期的であろう。固定資産税の支払いとメンテナンスの更新を怠ると、最終的にはその住宅が住居を提供できない結果となる。

生活必需品のいくつかは、食料を提供するために使おうとする時よりだいぶ前に購入することができる。それらも維持費がかかる。それらを保管しなければならず、時として、所有形態によっては継続的に課税される[6]

経済情勢に依存しない将来の価値を現実に貯蔵した資産は他にもある。しかし、道路、橋、ダム等、莫大な維持費なしで長期間価値を維持できるものは、ほとんどない。

どれだけの退職給付制度が、加入者が無料で居住できる住宅や、安く貯蔵して最終的に加入者に無料で配布される、便利で食用に供する生活必需品を保有しているであろうか?退職給付制度の基金が保有する実質的にすべての資産は、将来の経済活動に依存して価値が決まる資産である。

債券は、明らかに借り手の将来の収益に依存している。元本と利息を返済するという約束は、借り手の収益力なくしては本質的に意味がない。無担保の債務において元金返済のために将来の経済活動が要求されるのと同様に、担保付債務は担保物件そのものの継続的な市場によって保護されている。

それでは、株式、リミテッド・パートナーシップ、その他の持分のような、所有に関係する資産はどうか?Enron崩壊が、よい例である。投資家が、Enronはよく管理された会社で将来の収益を増加させる特筆すべき機会を保持している、と信じていたとき、同社の株価は非常に高かった。株価の一部には、Enronの事業手法が産業全体の生産性を上昇させ、その結果、全体の富が増加する、という経済全体への好影響が含まれていた。真実が明らかになると、分配可能な価値は実質的にゼロとなった。株式は、将来の各年度における分配可能な収入の現在価値に関係する評価額となることが想定されている[7]。破産における企業の「清算価値」[8]は、通常は極めて小さい。PBGCは、破産した制度提供事業主の純資産から、積立不足の約5%を回収する[9]。この「5%積立不足」は、PBGCが受益者に対して負うこととなる額を基準として決めるのであって、彼等が事業主から約束されたと思っている額を基準としているのではない。

将来の利益水準への信頼は、企業価値の重要な決定要因である。2001年以来のキャピタルロスの大部分の原因は、最終的に人々が、かつての不合理な繁栄[10]がもやは現実的でない、と考えたことに帰する。

将来の経済活動に依存せずに価値を保持することが可能であるという原則は、米国社会保障制度改革の最近の勧告に拡張される。普通の人々に、将来の引退のために投資資産の価値を保持することができる、ということを納得させる試みが実施されてきた。彼等は、たとえ労働者が2人しかいなくて、それぞれが就労していない人を扶養している場合でも、引退した人は投資資産を充分に蓄積するしたことで裕福に暮らすことができる、という考えに同意を求められた。

その時の労働者は、引退した人が自身のポートフォリオに累積した投資資産の価値を認識することと引き換えに、「よろこんで」消費を減らす、という仮定が存在する。引退した人が、自身の住居、貯蔵可能な食料、その他有用な生活必需品の形態で貯蓄していない限り、彼等は消費のための価値を創造する労働者に依存することになる。

引退者/被扶養者は、どれだけ支払わなければならないであろうか?労働者に生産を促すのに充分な額とは、全員に充分な額なの全員に十分なものを生産することを、労働者に促すに十分なもの[RM2] である。最終的に経済における貨幣価値をコントロールするは労働者であり、引退者ではない[11]。労働者が自身の生産活動から公正と考える分け前を得ていないのなら、彼等は単純に、労働に対してより多くを請求するであろう。労働需要が労働供給を上回るため、労働者は要求したものを受取るであろう。裕福に生活することを望む引退した人々は、従属人口比率を低下させることに協力せざるを得ない。彼等は働き、雇用税を支払うことになるであろう。

事実上、退職給付制度が保有するすべての投資資産は、将来の経済活動の価値を格納した貯蔵庫のようなものであり、関係者間の契約上/法律上の関係にもとづく支払いの約束であると説明される。債券は、通常はある時点における元本の利息とともに、一定期間にわたって元本の一定割合を支払うことを約束する。所有に関連する証券は、将来の収益の一部を、その時の所有関係と持分を基準として支払うことを約束する。

 

給付建て制度(DB)対掛金建て制度(DC)

従業員から見た場合、老齢期の引退の準備に関して、まったく異なる2つのアプローチがある。

DC制度は、事業主が各口座に実際に掛金を拠出した時点で、受給権が極めて急速に確定する[12]現在の収入への増額となる。事業主が提供者となるDC制度の信託は、制度のコストを信託資産から控除することが多く、それはIRARRSP (訳者注:米国の個人引退勘定およびカナダの登録引退貯蓄制度)等の個人制度との比較で、従業員にとっての追加負担となっている[RM3] 。しかも、アームズ・レングスよりも短い距離での取引機会が多々ある。

証券会社や運用会社は、DC制度においては教育のみが成否の鍵を握る、と信じ込ませている。社会にとって、401(k)やその他のDC資金の投資方法を充分に教育することは、困難である。プロの投資家の中でも、平均を上回るのは、わずか半分程度である。教育を受けて自身の資金を投資する普通の人々が増加すれば、プロはすべての投資家の平均を上回る者が増加し、統計上は向上する。

たとえ個人投資家が充分教育を受け、かつ幸運であったとしても、リスクおよび/またはコストは甚大なものである。実際、零細投資家は、投資選択も限られ、分散投資が不充分で極めて投機的になることが多い。零細なポートフォリオに効率的フロンティア[13]など、あてはまるのであろうか?事業主補助掛金を制度提供事業主の株式に投資することを求め続けている制度もある[14],[15]。たとえそのようなことを求めなかったとしても、従業員は分散投資を行なわないことが多い。

北米における今日の状況は、自動的加入と自動的掛金引上げを採用する企業が増加していることを示している。MarketWatch[16]で引用されているHewitt Associatesのサーベイによると、自動的に加入した者の掛金は、主として「保守的な」ポートフォリオ[17]に投資されているという。引退給付に対する影響について、HewittMs. Lori Lucasの以下の発言が引用されている。

たとえ、加入者が前向きに加入し、積極的で充分に分散投資されたファンドに、自動的に加入した時より高率の掛金を拠出していたとしても、彼等のうち何割かは、当初のより積極的なファンドもしくは十分に分散投資されたファンドを用い、より高い拠出率で自ら加入していたであろう者でさえ、自動加入の場合には、その何割かが保守的なデフォルトファンドを維持するという惰性を許してしまう。このことは、彼等の引退収入の適正性を損なう効果を持つ懸念がある[18]。」

対照的にDB制度は、例えば老齢による引退のように、特定の事象が発生したときに一定の給付を提供するが、金額は事象発生時の勤務や給与等の雇用に関係する事実によって異なる。給付額(標準的形態)は、様々な算定式で定義される。

1)  北米においては、給付額は従業員が継続して働いていたとした場合に、老齢による引退日であったであろう時点から支給開始となる年金として定義されることが多い。早期引退の減額要素や早期引退補助を失うことの喪失は、実際の離職において従業員が現実に利用可能となる価値に重大な影響を及ぼす。

2)  日本では、給付額は従業員が退職したときに支払われる一時金として定義されることが多い。通常は、早期引退の減額は存在せず、給付額は年齢を考慮することなく定義される[19]。このことは、全員が早期引退補助を利用可能であることを意味する。

制度提供事業主から見た場合、両国において掛金建て制度は、従業員から見た場合とまったく同じで、本質的には現在の給与の増額である。加えて、DC制度には柔軟性がある。1980年代の米国における401(k)制度の出現以来見てきたとおり、事業主は、これらの制度に参加する程度を変更する柔軟性を保持してきた。そのことにより、事業主補助掛金の割合は、当初の水準から頻繁に引き下げられてきた[20]

しかし、制度提供事業主から見た給付建て制度はどうであろうか?

日本では、民間の事業主は、主に2つの方法で給付建て制度を提供する。1つは、保険会社や信託銀行といったサービス提供業者から購入した制度であり、以前は適格退職年金(TQPP)および厚生年金基金(EPF)といわれていた。もう1つは、就業規則内にある内部的な約束で、「引当金」制度[21]といわれている。

「引当金」制度のもとでは、事業主は現在の労働に対して将来の給付を約束する。その約束は、支払い時期における給与や勤務等の雇用関係の要素にもとづいた一時金である。制度終了時には通常、従業員は制度が規定されている就業規則[22]にもとづいて、企業が負っている給付の支払いを受ける。破産法のもとでは、給付に対する優先的権利が存在するが、一定の限度がある。

外部積立制度の場合、制度提供企業は個々に計算された保険料を拠出することを求められる。制度終了時には、制度加入者は、給付について制度にしか注目できない。保険会社および信託銀行は、基金が枯渇した後も残るような約束を、めったにするものではない。厚生年金基金の場合には、債務を第三者に移転する[RM4] 超法規的な施策が存在する[23]。しかし、日本の外部積立制度は、事業主の義務は拠出時期になったら保険料を拠出することだけという点で、実質的には掛金建て制度である。

 

北米の現状

事業主から見ると、北米のすべての民間退職給付制度は、実は掛金建て制度である。

例えば、米国の多数事業主制度は通常、団体協約にもとづく一定の「時間単価」の掛金を要求している。法律的に要求される事業所脱退時の掛金[24]や、一部の事業主が団体協約を超えて拠出しなければならない局面もあるが、これらは法的に要請された信託基金への掛金であり、従業員に約束した給付の支払いではない。従業員は、「約束された」給付に関しては、多数事業主信託基金を注目することしかできない。

うまく規定された多数事業主でない制度にも、実際には制度終了の際に給付を「積立の程度」までに制限する文言が含まれている。エリサ法は、制度の適格性や、計画していない追加的掛金が要求される状況[25]を含む、適格退職給付制度の積立における制限を、事細かに規定している。

エリサ法は、制度提供事業主に給付を約束させることによって、約束した給付を直接加入者に支払うことを求めてはいない。私的年金制度は適格でなければならないが[26]、それは、制度が制度提供事業主とは分離した主体である信託に含まれなければならないことを意味し、信託は事業主や債権者から隔離されている。信託は、受益者、すなわち加入者に支払いを実施する。制度提供事業主は、信託に対する義務があるのであって、加入者である従業員に対して義務があるのではない。

興味深いのは、エリサ法の適用外となっている公的部門の給付建て制度には上記があてはまらない、ということである。それらの多くは、繰延給与の約束を法律に組み込んでいる。徴税力のおかげで大部分の公的機関にとって本当の破産はほとんど有り得ないが、現在の労働に対する将来の給付の約束は、法的強制力がある。つまり、約束は、本当の意味で将来のための約束なのである。有権者に約束を変更する力があることは事実である。しかし、カリフォルニア州知事は最近、公務員がいかに知識を持っているか[27]、また、自らの価値ある給付建て制度を維持するために、いかに積極的に働くか、に気付いた。

非常に寛大な米国大統領の給付(議員の給与にスライド)や国会議員の給付は、伝統的な意味で事前積立ではない。55歳の前大統領に対するセキュリティ(シークレット・サービス)、事務所や事務所のサポート等の見通しが立てられる費用を計算に入れなくても、このたった1人の引退に伴なう現在価値は、容易に390万ドルを越えてしまう[28]。この制度は外部積立ではない。米国大統領や議会は普通の人々が個人勘定を持つ